各 論
第一 法人税制について
1.法人税基本税率の引き下げ
わが国の法人税の実効税率は、アメリカ並みの39.54%に引き下げられたとはいえ、EU諸国やアジア諸国にくらべてまだ高い。近年主要国では、法人税を引き下げる傾向にある。このため、法人税の基本税率については、租税特別措置の整理・合理化等により課税ベースの拡大を考慮しつつ、地方税を含め、一層引き下げる必要がある。
2.中小企業軽減税率の引き下げ
中小企業に適用される軽減税率については、その適用所得が昭和56年以降800万円に据え置かれており、また基本税率との格差も縮小してきている。現在の厳しい経営環境や担税力に配慮して、軽減税率を22%から20%程度へ引き下げ、適用課税所得を800万円から1500万円程度に引き上げる必要がある。
3.同族会社の留保金課税の廃止
同族会社の留保金課税については、平成18年度改正で、対象となる同族要件が緩和され、留保控除額が拡大された。しかし、制度そのものは存続している。この課税制度は、個人所得課税とのバランスを図るために設けられているものであるが、近年、所得課税の大幅な軽減が行われ、所得税率と法人税率の格差は縮小し、存在論拠を失っている。
これに加えて、留保金課税は、内部留保により、懸命に資金調達を図ろうという中小企業にペナルティを与えるに等しく、自己資本比率の高い大企業にくらべ、著しく公平性を欠いている。まさに努力した者が報われない税制の典型とでもいうべきものである。以上の理由から中小企業の同族会社に対する留保金課税は、この際廃止することを強く求める。
4.特殊支配同族会社の役員給与の損金算入制限
この課税制度は、新会社法施行に伴い取られた措置であるが、本件が浮上してきたのは、平成18年度与党税制改正大綱決定の直前であり、十分な議論が尽くされたか否かは、必ずしも明らかでない。
しかもこの制度は、法人税と所得税についての税制のいわば根幹にかかわる重大な問題をはらんでおり、法人課税で給与所得控除分を損金算入しない仕組みは合理性に欠ける。
また、要件操作によっては特定同族会社から外れることも可能であり、中小企業間で新たな不公平を生む可能性がある。さらに申告手続きが複雑で、中小企業に負担増を強いるものであり、該当する企業数、税収等も不明など不透明な要素が余りにも多い。このような中小企業に新たな混乱を招く税制は、廃止を含めた抜本的見直しを行うよう求める。
5.減価償却制度の見直し
建物、機械装置等の減価償却制度は、IT革命等の技術革新の加速化、欧米の償却制度を参考に償却期間の短縮を図る必要がある。また、余りに複雑な資産区分を簡素化し、残存価額制度について、先進国並みに廃止する必要がある。
6.交際費課税の抜本的見直し
交際費課税は、創設当時(昭和29年)の資本蓄積を図るという政策目標は消失している。平成18年度改正では、若干の改正があったが、交際費が経費であることを考慮すれば、交際費課税は抜本的に見直すべきである。この制度が直ちに廃止できない場合は、資本金に関係なく一定の損金算入を認め、現在の損金算入限度額も大幅に引き上げるべきである。
7.その他
(1)租税特別措置の見直し
課税ベースを広げ、公平な課税留保の観点から、租税特別措置について検証を行い、政策目的を達したものは即刻廃止、その分を税率引き下げに向ける努力が必要である。ただし、中小企業の技術革新など活性化に資する措置は積極的に活用すべきである。
(2)欠損金繰戻還付制度の復活
欠損金の繰戻還付制度については停止措置が延長されているので、速やかな復活を求める。
(3)役員給与の損金算入
業績連動型報酬については、利益連動給与として一定の要件下で損金算入が可能になったが、同族会社は対象外になっている。企業活力や経営意欲を高める観点等から、同族会社についても、同様の措置を認めるようにすべきである。
(4)配当に対する二重課税の是正
現行の配当課税は、支払段階の法人税と受取段階の所得税(法人税)が二重課税となっており、若干の調整が行われているものの、不十分である。そこでEU各国の制度を参考に配当の二重課税を是正すべきである。
(5)非営利法人課税
新しい非営利法人制度は、今国会で公益法人制度改革関連法が成立、平成20年から施行される。現行法では、公益法人等が収益事業から生じる利益を非収益事業に支出した場合は、それを寄付金とみなして寄付金の損金算入限度額(所得金額の20%相当額)まで損金算入できる「みなし寄付金制度」が設けられている。一方、収益事業については、現在法人税の軽減税率の強化が検討されている。そこで、課税バランスの観点から、「みなし寄付金」の損金算入限度額の大幅な拡大を求める。また、法人税については、公益法人に対する寄付金の損金算入限度額の拡大を求める。
(6)電子申告
電子政府の実現のための政策の一環として、国税庁が国税電子申告(e-Tax)を平成16年6月から運用開始したが、利用件数が低迷している。その理由として、カードリーダーの取得費用、申告手続きの煩雑さなどの問題があげられる。このため、利便性を高めるとともにインセンティブとして電子申告控除の創設を求める。同時に地方税の電子申告(eLTAX)との連動も必要である。